睡眠は、心身の疲れをとってくれる大切なものです。なかなか眠れない、すぐ目が覚める、寝たのに寝た気がしないなど、十分な睡眠がとれないのは、とてもつらいものです。早く眠らなければ朝が来てしまうと焦れば焦るほど、余計に眠れなくなってしまいます。
目を閉じて横になっていれば、ある程度疲れをとる効果があるといわれています。深呼吸をして気持ちを落ち着けましょう。
漢方では、眠るためにも体調がととのっている必要があると考えます。健康的な眠りには、適度な疲れとリラックスが不可欠です。心身が緊張したり、弱まっている状態では、よい睡眠は得られません。
不眠症のタイプ
不眠症は、４つのタイプに分けられます。
- 寝つきの悪い「入眠障害」
- 眠りが浅く途中で何度も目が覚める「中途覚醒」
- 早朝に目が覚めてしまう「早朝覚醒」
- ある程度眠ってもぐっすり眠れたという満足感（休息感）が得られない「熟眠障害」
このような不眠が１ヶ月以上続き、日中に倦怠感、意欲低下、集中力低下、抑うつ、頭重、めまい、食欲不振などの不調があり生活の質が低下するとき、「不眠症」と診断されます。
漢方で考える不眠
心配で眠れない、興奮して眠れない、腹が立って眠れないなど、感情が不眠と深い関係があるとされています。漢方において不眠症は、主に 「心」・「肝」・「脾」の3つの臓腑が関係していると考えられています。
何らかの原因でこれらの臓腑の働きがうまくいかないと、身体のバランスが乱れ、不眠の症状があらわれます。臓腑に影響を与える原因としては、疲労、手術や外傷、精神的ストレス、生活の乱れ、女性であれば月経、出産などさまざまです。
心身の緊張や、弱まりが不眠の原因に
よい眠りのためには、心身のバランスがととのっている必要があります。不眠は、極度の緊張やストレスなどで自律神経が乱れ、バランスが取れていない状態です。なかなか眠れない、すぐ目が覚めてしまう、眠りが浅いなど症状の出方もさまざまです。それぞれタイプごとに原因が違うので、早めに対処して、ぐっすり眠れる体質に戻しましょう。
心血が不足した「心脾両虚」タイプの不眠
症状
寝つきが悪い、夢が多い、眠りが浅いなどぐっすり眠れない、動悸、疲れやすい、食欲不振などの症状が現れやすいです。
改善方法
胃腸が弱いため、栄養のとりこみが悪く、気や血が十分に作られないので、心血が不足し、眠りが浅くなっています。
胃腸をととのえながら、気血を補う漢方薬を用います。
からだに熱がこもった「心腎不交」タイプの不眠
症状
心がそわそわ落ち着かず、何度も目が覚める、手足の裏がほてる、寝汗をかく、喉が渇くなどの症状が現れやすいです。
改善方法
潤いが不足しているため、からだのバランスが崩れ、余分な熱がこもった状態です。「腎」が消耗し、「心」をコントロールできないときに不眠の症状がでてきます。
潤わせて熱を冷ますものや精神を落ち着かせ安眠を促す漢方薬を用います。
ストレスが多い「肝鬱血虚」タイプの不眠
症状
寝つきが悪い、驚きやすい、胸やお腹の張り、ため息がよくでるなどの症状が現れやすいです。
改善方法
疲労やストレスで、精神を安定させる「血」を消耗したため、「心」と「肝」に「血」を十分に補えず、不眠が起こります。
心と肝に血を補い、気血を巡らせる漢方薬を用います。
また、気分転換をはかり、精神をリラックスさせることも大切です。
老廃物が停滞した「痰熱内擾」タイプの不眠
症状
寝つきが悪い、眠りが浅い、熟睡感が得られない、夢が多い、体全体が重だるい、めまい、胃がムカムカするなどの症状が現れやすいです。
改善方法
胃腸が弱かったり、食生活のかたより（お酒や脂っこい食事や過量の水分を好んでとる）や季節（梅雨などの高湿度）などにより、体内に水分が滞り、痰濁（＝悪い老廃物）がたまり、熱がこもることにより、不眠が生じます。
痰と熱を取り除く漢方薬を用います。
ストレスが多い「肝火上炎」タイプの不眠
症状
寝つくことが出来ない、ひどいと明け方まで眠れない、普段からイライラが強かったり、怒りやすい傾向があります。
改善方法
疲労やストレスの蓄積から「気」の流れが悪くなり生じた熱が、精神的に興奮させている状態です。
気の流れを整える漢方薬と熱を冷まし興奮を鎮める漢方薬を用います。
不眠のご相談は
あなたに合った漢方薬が何かは、あなたの体質により異なります。
自分にあった漢方薬が何かを知るには、漢方の専門家に相談し、自分の体質にあった漢方薬を選ぶ必要があります。
当薬局では漢方専門の薬剤師がおひとりおひとりから丁寧にお話をうかがい、どのタイプに当てはまるかを慎重に判断し、ベストの漢方薬を処方しています。（混合型や、上記とは別のタイプの場合もあります。）
ご相談くださいませ。